vol.21 : 縦長一枚絵を描く – その3


前回はInkscapeで背景絵を描きました。今回はそれをラスタライズした上でPainterで細部を書き加え質感を出していきます。

Painterについて

今回使うのはCorel Painterです。

Painterは古参のアナログ画材のシミュレーターで、僕が知る限りデジタルでアナログ画材風に描けるという意味ではこれ以上のソフトはありません。決して完璧ではありませんが(バグがある、重い、など)他では出来ないことがこのソフトではできますのでやはり欠かせないソフトです。
逆にいうと、アニメ塗りや萌絵のようなものを描く用途には全く向いていません。
今回はこのBパートの背景と、Dパートの背景でPainterを使用します。

InkscapeからPainterへの持って行き方

まず、InkscapeではあらかじめPainterで作業したいレイヤーに分けておきます。Painterはレイヤーが多いと重くなりますので、レイヤー数は最小限にします。幸いベクターで描いている絵はグラデーションの箇所をのぞいて色が均一ですので、Painter上で色域で指定して範囲選択することで同一レイヤーでも塗り分けはある程度できます。間にキャラが入るなど、物理的に前後関係が違う箇所のみレイヤー分けしておきます。
次に、InkscapeでXCF(GIMP)形式に保存します。これをGIMPで開き、キチンと表示されていることを確認し、PSD(Photoshop)形式で保存し直します。
このPSDをPainterで開きます。僕が使っているのは Painter 12 ですが、よほど古いPainter(Painter 6など)でない限りはこの方法で行けると思います。

Painterでの作業

Painterには無数のブラシがありますが、今回使っているのは、「デジタル水彩」、「エアブラシ」、「スポンジ」、「ティント」です。
Painterの用途からして水彩系ブラシは基本中の基本ですが、歴史的な理由からPainterの水彩ブラシはものすごく複雑にカテゴリーが分かれています。僕はPainter 6から入ったため、「(新)水彩」や「リアル水彩」ではなく「デジタル水彩」やティントでつくった「なんちゃって水彩」の方が馴染めます。そのため今回もデジタル水彩を使用しています。
エアブラシはグラデーションに、スポンジは質感付けに使います。ティントは画材シミュレートじゃないいわゆる普通のブラシですが、あえてベタ塗りしたい時などに使います。
作業は基本的には以下の手順で行っています。
・Inkscapeから持ってきたレイヤーの一部を色指定して範囲選択、またはオブジェクトを全選択(透明度からマスク→マスクを選択範囲→選択範囲を反転)します。
・新規レイヤーを作成し、上記選択範囲にデジタル水彩やスポンジで色を塗っていきます。Inkscapeで描いたものはのっぺりしているので、色数を増やしながら陰影やテクスチャをつけていきます。
・これをオブジェクトごとに新規レイヤーを作成しながら作業します。選択範囲ごとにレイヤー分けするとあとで修正するのが楽ですがPainterが重くなるのでおすすすめしません。Painterは基本的にさっさと確定させて作業をすすめレイヤーをあまり増やさないのが常道です。
あとは、全体のトーンを揃えるために上からエアブラシを吹いたり、光を入れたりします。

Before : Inkscapeで描いた元絵

After : Painterで書き加えたもの

どうでしょう? かなり良くなったのではないでしょうか?
ちなみにこの絵では木の影が落ちていませんが、これはキャラの立ち位置が確定してからキャラの影と一緒にうるさくないかどうかを調整しながら描く予定で、この時点では決められないため省略しています。
一部拡大してみます(等倍)。

質感はこれでもかというくらい大げさに付けています。一応フルHD対応とはいえ、実際に見る人は大きくても1280程度で見ることになりますし、圧縮で多少ボケることも考慮して、このくらい大げさにします。

コントラストや彩度などはキャラが上がってから最終調整しますのでこの時点では仮ですが、今のところこの木陰の暗いところが沈んでないようなコントラストが弱めな感じに揃えようかと思います。というのもこの絵では光源は左上。ほとんどのキャラが逆光になっていますので、影が暗いと顔が見えなくなってしまうからです。その分光があたっている部分はもっととばしてもいいかもしれません。

これからの作業

この絵にキャラをのせていくのですが、場所によってはレイヤーが前後する箇所があります。手すりや青い軽トラ、木の枝などです。また、キャラを配置するとそのキャラが背景に落とす影も決まります。なのでこの後の作業はキャラの数と位置が正確に決まってからになります。また、一部キャラで隠れてしまう部分については描き込みを省略したり形がおかしいまま放置していたりします(枝など)。これらもキャラの位置によっては描き直しが必要かもしれません。いずれにしてもキャラ次第ということになります。
そして、キャラ数と立ち位置は現状ではまだ確定していません。そのためBパートの作業は一旦ここまでとします。
次回はAパート(宇宙)に入ります。ここは3DCGでやる予定です。乞うご期待!

現在の進行状況

作詞:100%
作曲:90%
編曲:80%
動画:17%

(2017/05/12追記)

完成動画はこちらになります!


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