『夜に桔梗を』の曲作りについて


使用DAWについて

前回の記事はこちら

今回はDAWにCakewalk by Bandlab を使用しています。

以前はSONARを使用していましたが、前回作『未来はまだ明るかもしれない』からは後継のCakewalk by Bandlab をメインDAWとして使用しています。過去の全バージョンのSONARと比較しても、今のものが最も安定していて良いバージョンだと思います。

初期の曲作り

初期のデモの時点ではギターの弾き語りでコードとメロディを作り、それを簡単に打ち込みました。作詞をしてもらうためのガイドライン程度のデモなので、AddictiveDrumsでリズムを刻み、SampleTankのピアノでコードを、フルートでメロディを打ち込んだだけの1コーラスのものです。

アレンジについて

前回の記事で書いたように、歌詞が決まったあとにほとんど作り直すことになったので、この時点で全く新規のプロジェクトとして立ち上げ直し、メロディやコードの変更を行いつつ、同時にアレンジも行いました。BPMもデモよりも若干落としました。

この時点でローファイドラムとノーマルなドラムの音を重ねるというアイデアを思いつきました。 これも前回の記事に書きましたが、動画のコンセプトが「過去編と現代編の二重構造」になっているため、過去の象徴としてブレイクビーツっぽいローファイドラムがなっていて、現代はそれとは別にはっきりとしたキックなどが鳴っているのがいいのではないか?という考えた結果です。その後最後までブレずにこのアイデアで行きました。ローファイドラムは実際にはブレイクビーツではなく XLN Audio Addictive Drums 2 で打ち込んだものを iZotope Trash2 や Alloy2 などで加工しています。ノーマルなドラム音には Native Instruments Battery とSonic Academy Kick2 を使用しています。また、それとは別に、グリッチノイズを Battery で足しています。

今回はそれほど音数が多いわけではないので、アレンジにはそれほど時間は掛けていないのですが、前述のデモバージョンのあとに、動画打ち合わせに間に合わせるために作ったバージョン(2018)、それにイントロを追加しアレンジを膨らませ一旦完了としたバージョン(2020)、動画完成前にさらに改良したバージョン(2021)と時間が経つに連れ徐々にアレンジは変わっていきました。

ボカロについて

Vocaloid は早い段階で 結月ゆかり 穏 に決めました。この曲に合わせて購入しました。また、コーラスでは僕の曲ではいつもおなじみの IA を起用しました。ゆかりとIAを使うのは特に何かを狙ったわけではありませんが、キマシタワーP にはこの組み合わせをおすすめされました。

エディタには Vocaloid Editor V5 を使用しています。V5エディタにはやっと慣れました。プリセットを選ぶと毎回余計なエフェクトが刺さってる点を除いては、概ね良いと思います

使用音源

最終的に残ったトラックについて軽く説明します。

  • ローファイドラム:XLN Audio Addictive Drums 2
  • キック:Sonic Academy Kick2
  • キック以外のドラム :Native Instruments Battery
  • グリッチノイズ:同上
  • ベース:MODO BASS
  • リコーダー:Native Instruments KONTAKT(Factory)
  • エレピ1:SampleTank 3
  • エレピ2:Native Instruments SCABEE Mark I
  • ストリングス:Native Instruments Session Strings Pro / Session Strings Pro 2
  • オルガン:UVI Acoustic Toy Museum
  • ベル:AAS Chromaphone
  • シンセ1、シンセ2:Native Instruments Absynth 5
  • シンセ3:Z3TA+ 2
  • ギター:AAS Strum GS-2
  • FX(Riserっぽいやつ):Vital

とこんな感じです。

使用エフェクトなど

今回は、時短のために曲作り用のプロジェクトから直接2mixで出すことも想定してエフェクトを使って行きました。

ボーカルとコーラスの処理は Cakewalk VX-64 Vocal Strip をメインとして、iZotope Nectar 2 と Softube Fix Doubler で整えました。

MODO BASS には Positive Grid BIAS AMP 2 を使っています。 BIAS AMP、音は良いのですが毎回ログオフされてしまう問題があって面倒くさいです。

空間処理では、Cakewalk Sonitus Delay、Native Instruments Replika、UVI Relayerなどのディレイの処理をメインに、リバーブは Exponential Audio R4 を初めて使用しました。その他に、Softube Fix Flanger、Melda Production MAutopan 、MStereoExpander なども使用しています。Melda のプラグインはとても良いのでいつかレビューしたいと思っています。ただ、UIの見づらさはもうちょっとどうにかならないのかなとは思います。

その他全体的に、Cakewalk 内蔵のProchannel の EQ やコンプ、SSL Bus Compressor などを使用しています。それから、今回大活躍したのが、FLUX:: Evo Channel です。半分くらいのトラックに刺さっていて、主にEQ、サチュレーション、トランジェントの処理を行っています。今年に入って購入したものですが、これがとても便利なチャンネルストリップで、iZotope Neutron を差し置いて、最近のプロジェクトではだいたい刺さってます。最近は実機エミュ系のチャンネルストリップが流行っていますが、僕にはこういうデジタル系UIのものの方が合っているようです。

ミックス/マスタリングについて

ミックスは通常であれば Cakewalk by Bandlab からパラアウトしたものをSamplitudeに持っていってミックスするのですが、今回はPCを新調していたこともあり Cakewalk by Bandlab の時点でかなり追い込んで満足のいく音が出ていたので、ステムで出したものを Samplitude に立ち上げて整えた程度です。

ここで使用しているのは、SSL Bus Compressor、Melda Production MAutoDynamicEQ、Wavesfactory TrackSpacer25、Sonnox Oxford Limiter、Ozone 5 、Ozone 8 です。Ozone 5 は Matching EQ が Ozone 8 より使いやすいので使っています。他に確認用には iZotope Insight 、Voxengo SPAN、Sonarworks Reference 4 などを使用しています。

ラウドネスのターゲットは -14.5 LUFS(Integrated)としました。ニコニコ動画がラウドネス基準を設定してから初めてのアップロードになりますが、僕は以前から「ニコニコ動画はラウドネス基準を設定すべきだ」と考えていたので(ドワンゴの方にも何度も提案しました)、やっと実現したことを嬉しく思います。で、現在の仕様では、そのニコニコ動画が -15 LUFS、Youtube や Spotify が -14 LUFS ということなので、間を取って-14.5 LUFS とすることにしました。ニコニコ動画では -0.5 LUFS 分下げられてしまいますが、別々に作る手間を考えるとこんなもんで良いのではないでしょうか。

曲作りに関してはこんなところです。なにかご質問などあれば、Twitterかマストドンにリプライを送ってもらえれば何でもお答えします。

(つづく)

次は、動画用のイラスト制作について書きたいと思います。→書きました

追記:動画公開しました!


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