『夜に桔梗を』の動画用イラスト制作について(コンテ~線画編)


前回 は、曲作りの解説をしました。今回からは数回に分けて、動画の制作について解説していきます。今回は線画編です。

今回のイラストは水彩です。デジタルで水彩風にするか、実際に水彩絵の具で描くかは最後まで迷いましたが、最終的には水彩絵の具で描きました。

絵コンテ

まずは絵コンテを書きます。

絵コンテと下書きを混同している人もいますが、絵コンテは動画でどのタイミングでどういう絵をどのくらいの長さで表示させるのか、ズームしたりスクロールしたりするのか、などの演出を決めるためのものです。きれいに書く必要はなく、なんなら絵でなくても文字と丸とか四角とかでも良いくらいです。

今回は絵コンテ~線画清書までをすべて CLIP STUDIO PAINT(通称:クリスタ)で描いています。

まずは、新規プロジェクトで思いついたままにコンテを書いていきます。今回はクリスタのライブラリで無料配布されていた「シンプル絵コンテ」(コンテンツID:1638692)というテンプレートを利用させていただきました。

ざっくり入れたい要素を入れたら、これを動画ソフトで読み込み、曲に合わせて実際に表示させたいタイミングに配置してみます。1イラストが何秒くらい表示されるのか、ズームするのかスクロールするのかなどもここで実際に試します。

コマごとに切り取ったりなどはせずに、A4サイズの絵コンテ画像のまま動画編集ソフトにインポートし、拡大スライドして配置、テロップなども仮で入れてみてタイミングを決めていきます(ビデオコンテ)。実際に映像の尺に合わせてみたらイラストが多かったり少なかったりするので、ここで足したり削ったりします。このコンテ段階での試行錯誤のプロセスがとても重要です。どのくらい重要かと言うと、ここで考えて意図した以上の作品は、その後どんなに努力してもできません。そのくらい重要です。

実際にムービーファイルに書き出して確認すると、よりアラが見つかったりするのでおすすめです。

下描き~清書

コンテが完成したら、下描きに入ります。まず、クリスタで新規のアニメーション用のプロジェクトを作成します。クリスタのアニメーション機能は実際にアニメーションの動画を描くための機能ですが、僕はこれを「複数のイラストを一つのファイルに置ける便利機能」として活用しています。

アニメーションフォルダ上に、描くイラストの数のぶんだけのレイヤーフォルダを作ります。タイムラインにはレイヤーフォルダでなくレイヤー自体を置くこともできますが、それでは今回のような用途ではあまり意味がないので、最初から001,002,003…のようなフォルダを作成して配置していきます。アニメーションを作るわけではないのでフレーム数などは適当でかまいません。

この「一つのファイルに複数のイラストを置ける」やり方の注意点として、キャンバスのサイズはイラストごとには変えられません。今回、ズームやスクロールを想定していますので、縦長のイラストも横長のイラストもあるのですが、キャンバスを正方形にし、その中にフレームを書くことで対応しました。

解像度はフルHDを縦横に配置してちょっと余白を置けるサイズということで2000×2000ピクセルになっています。

すべての下描きが終わったら、動画ソフト上でコンテと置き換えて確認します。どのくらいディテールを描く必要があるのか(ないのか)かなどもここでチェックします。

僕の場合、最終的な線画を清書しているつもりでも、あとで納得できなくなってそれを下描きにして上から新しいレイヤーで線画を描く、ということが多々あります。なので下描きと清書の区別は作業工程上はあまりなく、納得できるか妥協できるか時間切れになるまでひたすら描いています。

↑後から気になって修正している様子。

このアニメーションフォルダを使って複数のイラストを描くやり方の利点は、すべてのイラストのJPEGやPNGへの描き出しを「アニメーション書き出し」機能で一括でできることです。なので、イラストのテイストを近づけるために複数のイラストをまたがって修正していく場合でも、どのイラストを書き出したかなどは特に気にする必要はありません。イラストをちょこちょこ修正しながら動画編集ソフトで確認する、などのやりとりもかなり楽です。

↑できるだけリアルな鉛筆に近づけるようにテクスチャ感を残しています。

全部出来たら、PNGに書き出します。その際に、背景は白ではなく透明にしておきます。

今回はここまでです。次回は水彩塗りに入ります。→次の記事書きました

完成動画はこちらです。


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