vol.5 : とりあえずデモを作る


前回は作詞のみゆきちさんに連絡を取り「回るコミュニケーション」の作曲の許可をいただきました。では、さっそくデモの作成にとりかかります。曲のイメージを伝えるのが目的なので、1コーラス分だけ作成することにします。

仮のメロとコードをつける

みゆきちさんの希望は「ロック」でしたが頭の中に浮かんでいるものはそうじゃないので、とりあえずその「頭の中にあるもの」をデータ化します。
僕の場合は、作曲方法は曲によって全く違います。譜面とにらめっこする場合もあれば、シーケンサーでマウスポチポチの場合もあれば、楽器をジャカジャカやる場合もあります。今回は詞先ということもあり、歌詞カード(ピアプロの歌詞を印刷したものです)を見ながら、アコギで弾き語りつつ少しずつイメージを固めていきました。


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↑ボールペンでコードを書いたのがこれです。最初に紺で書いていたのですが途中で移調したため赤で直しています。
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↑作曲時にコードの確認に使用しているギターはこれ。本文中ではアコギと書きましたが、正確にはクラギです。YAMAHAのG-90A。駒が外れているため中古屋で3000円で売っていたものを購入しました。駒のかわりに爪楊枝を使っています(笑)
ちなみに作曲するのにギターを弾けることは必須ではありません。何の楽器も弾けなくても作曲自体はできます。でも何かできると楽です。何か一つということであれば鍵盤楽器がおすすめです。なぜならパソコンで音楽制作する時に、マウス、PCキーボードの次に必要になるのがMIDIキーボードだからです。
この段階でやることは、コードを決めること(仮)、メロディを決めること(仮)、だいたいのテンポを決めること、の3つです。これが狭義の作曲です。今回は3回くらい詞を読んだらだいたい全部できていたので、楽器を使ってコードを確認する作業だけです。
たまに「どうやってメロディが浮かぶの?」とか「どのコードが良いってどうやって決めるの?」と聞かれることがあるのですが、どうやってるのかは…自分でもよくわかりません(笑い)。しかし、コツはあります。それについてはまた今度書きます。このブログを読んでいるといつかは出てくると思われますw とりあえずメイキングなので今のところは作業工程の説明を優先します。

デモを打ち込む

コードとメロディが決まったら、DAWで打ち込んでいきます。
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↑これはプロのスタジオでも御用達の超小型MIDIキーボードCASIO GZ-5(生産終了品)。打ち込み用のMIDIキーボードは、ほんとはMIDI出力がついているものならなんでもいいんですが、よくわからない人はUSB接続のDTM用キーボードを買いましょう。僕はこれの他にiRig KEYSなどいくつか持っていて、用途や気分によって使い分けています。
僕は多数のDAWを所有しています(これについては長くなるのでまた後日)が、今回はラフから完成まですべて SONAR X2 PRODUCER を使用します。SONARはボカロ曲を作るDAWという意味ではベストな選択肢の中の一つだと思います。もちろん他のDAWでもかまいませんが、予算に余裕があればSONARのようにボーカル補正プラグインのついているDAWが良いと思います。
デモ用の打ち込みのポリシーに関しては、世の中には恐らく2種類の派閥があります。
一つは「デモなんだから音色とか気にせずに割り切って打ち込め」派。最初から作り込んでいると後からの変更が効かなくなってしまうので、今のプロセスに集中するためにも音は割り切るべし、ということです。僕は基本的にはこっちにシンパシーを感じます。
もう一つは「最初から本番をイメージした音で作れ」派。コラボの場合は他の人に聴かせながら作業を進行させることになりますが、相手もプロじゃないので音がショボいと完成もショボいんじゃないかと思われることもあります。特にコンペの場合には見栄え(聞きごたえ)が良い方が印象を与えます。
で、今回は前者と後者の中間というか、自分用デモはまず前者で作り、提出の際に後者にしていく、という手法にしました。
僕の場合、コードやメロディがすでに決まっている場合に定番の打ち込み方はこうです。
1)まず適当に1小節のリズムを組み、DAWのループ機能で無限に鳴るようにしておきます。
2)それを鳴らしながら、エレピかオルガンでコードとベーストーンを手弾きで打ち込みます。この時はリズムは無視し、コードチェンジするまで白玉でキッチリ鳴らし、しっかりクォンタイズします(これはあくまでガイドとなるコードであって本番まで持っていくものではありません)。
3)メロディをフルートで入れます。
4)その後で実際に鳴らしたい楽器を順に入れていって、コード感がちゃんと出るようになったら先ほどのガイド用のコードトラックはミュートします。
5)ドラムにフィルなどの抑揚をつけます。
6)イントロやアウトロなどをつけます。
7)ボカロ曲の場合はメロディをボカロに差し替えます。
以前はこの時に使用する音源はSC-88系やJVなどのハードウェア音源だったのですが、最近はSONAR内蔵のTTS-1を使用します。かなり古いソフト音源ですが、軽いしGM配列で音の立ち上げが楽だしで重宝しています。こういう「音はショボいけどとりあえずいろんな楽器が一通り揃ってる」音源が一つあるとデモ作成には便利です。
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今回のデモでは
ガイド用のコード : E.Piano 1
イントロ : Harp
ベース : Fingered Bs
メロディ : Flute
ドラム : Room Set
を使用しました。

音色の差し替え

しかし作成中に音に不満が出てきたため、ドラムはSession Drummer 3の適当なプリセットに変更、またピアノをTrue Piano、ストリングスをD-Proで加えました。
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com05_dpro.jpg
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(ここまですべてSONAR内蔵音源です)
ここでガイド用のコードを切ってみたらちょっとコード感が足りなかったため、ギター(ストラト)を録音しました。本番で使うものではないのでかなりテキトーなカッティングです。録音はHi-Z入力に直差ししDAWでGuitarRigを立ち上げました。ギターを繋いだついでにアウトロにギターソロ(EBow)を入れてみました。
そして、メロディは購入したばかりのGUMIに歌わせてみました。一部ハモリも入れました。これでデモver.1完成です。
では、スクショをご覧ください。これ見ても何のことだかわかりませんね?
com05_shot.jpg

では聴いてみましょう

それでは、(かなりハズカしいのですが)自分用の初期デモをお聴きください。

詞はこちらです。「回るコミュニケーション
全パートベタ打ちだし、ボカロも無調教だし、ミックスのバランスもなっちゃいないし、音はかなりショボいと思います。でもいいんです。これは次の週末までに曲のイメージを忘れないようにするための自分用メモ(スケッチ)なのです。
コードは割と単純なので解説は不要でしょう。僕にも分数コードや転調を多様した複雑な曲がカッコイイと思っていた時期がありました…。でもそういうのって「複雑な曲作れる俺カッコイイ」みたいな、ある種の中二病のようなものじゃないかと思うようになりました。で、最近はこんな感じのシンプルな曲が好みです。

この後の作業は…

で、作詞担当に提出する用のデモはあらためて作成しなおすわけですが、ここで僕の場合は1週間寝かせます。なぜかというと耳を一旦リセットして聴きなおしたいからです。よほど切迫したスケジュールでない限り、耳をリセットして冷静に聴くというプロセスは重要です
で、翌週問題点を洗い出し、修正したバージョンを作詞家さんに提出するわけです。この時に他の人にもできるだけ聴いてもらって意見を出してもらうと良いです。そのために自分のコラボ相手だけじゃなくていろんな作曲仲間がいた方がいいですね。そのためのネットです。ネットは広大です。
ところで、やっとメイキングっぽい記事になってきましたが、どのくらい詳しく書こうかと迷っているところもあるので、「もっとこういう事を書いてほしい」というのがあればコメントください。ブログのコメントでもTwitterでもかまいません。
では、また次回

ここまでの進行状況

作詞:100%
作曲:50%
編曲:20%

(2017/05/12追記)

完成動画はこちらになります!


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