vol.3 : 曲先、詞先、責任者と決定権について


これまでの記事中に曲先や詞先という言葉が出てきたかと思います。(あ、詞先は出てなかったかな?) 今回はちょっとカタい話になりますが、作品を作成する上での作業の順序と権利や責任の関係について、楽師の立場から書いていきたいと思います。

曲先と詞先

ネット上のコラボの場合、メンバーが先に決まっていて一緒にコンセプトを練りながら作品を作っていく、というスタイルよりは、誰かが詞をアップしてその曲を募集する(詞先)か、誰かが曲をアップしてその詞を募集する(曲先)のどちらかが主流です。
これは巷の商用音楽でも同じことですが、どちらがやりやすいかは人によると思います。個人的には初心者なら作詞家あれ楽師であれ曲先の方がとっつきやすいのではないかと思います。

責任者と決定権について

ネット上でゆるーく始まっていくコラボはとても楽しいのですが、いろんなことがあいまいになって進むためトラブルも発生します。そこで、僕の考えるコラボでの基本的な権利と責任の考え方について書いておきます。
まず、先に面子を決める場合には、リーダーが誰なのかは必ず明確にする必要があります。基本的には最初に呼びかけた人がリーダーとなり、責任と決定権を負います。ここでいう責任とは、メンバーに連絡をとる責任、作品を完成させる責任、などです。決定権というのはどういうアイデアを採用するのか、どういうメディアでリリースするのかなどでモメた場合の最終判断をする権利です。リーダーがきちんとしていれば、何らかの作品は完成するでしょう。
問題なのは一番多いパターンである詞先あるいは曲先でコラボ相手を募集する場合です。ピアプロなどでは曲のついていない詞や、詞のついてない曲が多数アップされています。上記のルールに習えば、先にアップして募集している人がリーダーとなるのが正しいように思えます。しかしこのやり方ではうまくいかないことが多いと思います。なぜかというと、先にアップした人は自分の役割はすでに終わっており(場合によっては数年前だったりする)、他の人が「拾ってくれる」のをあるいは「拾ってくれた人が作業をするのを」待っている状態なので、完成させるためのモチベーションは拾った人ほどにはない可能性があるからです。
ですので(これは一般ルールというよりは僕の提案なのですが)、「先にアップして募集した人」(詞先であれば作詞家、曲先であれば楽師)が決定権を持つが、「拾った人」(詞先であれば楽師、曲先であれば作詞家)がリーダーとして作品完成の責任を持つ、という考え方です。
まだ最初のコラボを完成させていない僕が言うのもなんですが、失敗しているコラボ、もめているコラボはだいたいこれができていないことが多いです。
例えば、 詞先に対して応募した楽師が「曲を募集していたのでつけましたけど、動画は僕の仕事ではありません」と言って曲をつけて去った場合、その曲は世の中に公開されず日の目を見ないまま埋もれてしまう可能性があります。逆に、楽師が曲をつけて動画まで完成させたけれども、動画については作詞家さんに相談せずに決めていた、となると作詞家さんの意向と違った作品として公開されてしまう可能性があります。さらに楽師が「曲を付けます」と宣言し作詞家の承諾を得たものの曲を完成させずにそのまま放置している、という事態になると、作詞家さんは曲も完成しないしその詞を他の楽師さんに使ってもらうこともできない、という手も足も出せない状態になってしまいます。
きちんと話し合うことができていればそんなにトラブルになるることはないかと思いますが、会ったこともない人とのネット上でのコミュニケーションは案外難しいものです。なので、基本的には「相手が決定権を持ち、自分が責任を持つ」と考えておけば、認識が違っていた場合でもスムーズに起動修正できるのではないかと思います。
「五分五分でやりましょう!」という場合でも、権利は6:4で相手が、責任は6:4で自分が多く持つくらいで考えておいた方がいいでしょう。
では、次回よりいよいよ、作品作りの実際に入っていきます。


2013/10/06 追記
ここに書いたことについて「そんな堅苦しいルールは必要ないんじゃないか?私はなあなあでやってるがうまくいってる。気楽が一番」というご意見もいただきました。それはうまくいってる人はそうでしょう。しかし「気楽にやってうまくいってるコラボもある」という実例を出したところで、「気楽にやって失敗した」人には何の助けにもなりません。
僕はここに書いたことを「気楽にやってうまくいっている人」におしつけようとは思っていません。統一ルールを定めるべきだと思っているわけではありません。ただ、コラボ上のトラブルを見てきた立場から、初対面の人とコラボをやる上での心構えとしてみんながそう思っておけば不幸なトラブルは避けられるだろう、と思い書いているにすぎません。
気楽にやりたい方の気分を害したようであれば申し訳ございません。うまくいってない方のために書いていますので、うまくいっている方でご不満な点があれば、ぜひスルーしていただけると幸いです。

(2017/05/12追記)

完成動画はこちらになります!


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